融資を受けるタイミング
金融機関からの借り入れはできる限り避けたいと思われる方は多いです。借金があれば返済をしなければならないですし、利息の支払いも発生するし、返済に対するストレスも無借金に比べれば大きくなるでしょう。では、どの様なタイミングで融資を受けるかと経営者の方にお聞きすると、「本当にお金が必要になったとき」という回答がよく返ってきます。
この「本当にお金が必要となったとき」には、色々な意味が含まれています。新規事業を起こすための設備投資や運転資金が必要なときや、売上拡大により仕入代金が増加することに備えるための運転資金が必要なとき、経営が苦しくなったため運転資金が心もとなくなった
とき等です。ここではこの様なそれぞれのタイミングについて確認していきます。
目次
1.新規事業を起こすとき
2.売上拡大による運転資金が必要なとき
3.経営が苦しくなったとき
1.新規事業を起こすとき
金融機関は融資を行う際にはこの会社(人)にお金を貸した際に返済が滞ることなくしっかりと返してくれるのかという視点で審査を行います。その審査基準としては、過去の実績が一番客観的に判断することが可能です。それに加え、経営者の資質や新規事業の内容も判断材料となります。
そうは言いながら、既に事業を行っており、その事業の実績があるような会社の場合は別として、全く新たに事業を起こすときは、過去の実績がありません。この様な場合はどの様な基準で判断するのかと言うと、経営者の資質や新規事業の内容が主な判断基準となります。
経営者の資質とは、人となりやどの様な考えをお持ちかというよりも、これまでに経験してきたキャリアを新規事業にどの様に活かすのか、そのためにどの様な準備をしてきたのかという点が重視されます。要するに経営者ご自身の過去の実績(キャリアや自己資金を貯めてきたこと)が客観的に判断できるものとされます。まずその実績が確固たるものがある上で、新規事業の事業計画の実現可能性について審査されます。
実は、経営者ご自身の過去の実績が重要視されるので、一番融資を受けやすいのがこの新規事業を起こすとき(創業融資に限ります)です。
2.売上拡大による運転資金が必要なとき
売上が右肩上がりとなっている場合には、多額の資金が必要となり、しっかりと資金繰り管理を行っていないと資金ショートを起こす場合もあります。これは、一般的な場合では、先に仕入代金の支払いが発生し、その後に売上代金が入金されるからです。
今までは月間400万円で仕入れたものを1,000万円で売っていたとします。支払いは仕入れのほうが先行するので、先に400万円を支払ってから後日に1,000万円が入金されるため600万円の利益=資金が増加する形になります。ずっとこの様な状況が続いていれば貯めていた資金を仕入代金に回すことができますが、ビジネスを拡大するチャンスが訪れたとき、毎月1,000万円の売上だったのが、新規受注もあり2,000万円の売上になりそうだというときに手元資金が500万円しかなかったときは、2,000万円の受注にかかる仕入代金800万円を支払うことができないため、受注することができなくなります。
運転資金の調達は、資金が不足しそうだと感じてから動く経営者様が圧倒的に多いようです。確実に調達できる保証があれば、足りなくなってから動いても問題はないでしょう。しかし、もし調達ができなかった場合は、リカバリーする猶予がなく、たちまち窮地に追い込まれてしまいます。資金調達は余裕を持って行うのが大原則です。
経常運転資金とは、文字通り経常的に必要な資金です。仮に1,000万円の資金が経常的に不足する事業を運営しているのであれば、常に1,000万円以上の借入残高を維持しなくてはなりません。約定返済の分だけ借入が減少することは事前に分かっていることです。運転資金の調達は、資金が不足するのを待ってから行うのではなく、ルーティン業務として定期的に行うものであるとご認識ください。
では、運転資金の調達はどれぐらいの頻度で行うのが良いのでしょうか。
運転資金の調達は、毎年、決算書ができあがってからすぐに行うことをおすすめします。理由は、金融機関は決算書で融資判断を行いますので、翌年の決算書ができあがるまでの間であれば、すぐに申し込んでも、半年後に申し込んでも、10か月後に申し込んでも、借入可能な金額に大きな違いはないためです。
決算単位で借入可能な金額が決まっているのであれば、決算が出てからすぐに調達に動いた方が今後の計画は立てやすくなります。今回の決算での調達可能額が3,000万円だと分かれば、3,000万円を有効活用する計画を立てられますし、逆に今回の決算では融資を受けるのは難しいと分かれば、早期に対策を講じることができます。
運転資金の調達の仕方は簡単です。決算書ができあがったらすぐに銀行を訪問し、「既存の借入の巻き直し、もしくは新たな融資のご提案をお願いします。」と依頼して回るだけです。融資を受けられる決算内容であれば、各金融機関が積極的に提案をしてくれます。決算書ができたばかりですので、「試算表を提出してください。」とも言われません。
経営者様の中には、資金が不足していなければ金融機関に融資を検討してもらえないと勘違いしている方もいらっしゃいますが、決してそうではありません。資金繰りに困っていなくても、決算内容を見て新たな融資を検討してくれます。
3.経営が苦しくなったとき
一番融資を受けたいのはこのタイミングですが、このタイミングで融資を受けるのは中々難しいところになります。後ろ向きな借り入れのため、金融機関は上記1.2.に比べ二の足を踏む傾向にあります。しかし、セーフティーネット保証融資というものもあり、自社の業種が指定業種に含まれていて、直近3か月間の売上高が前年同期間に比べて5%以上減少している場合にはこの融資を受けることが可能です。
具体的な申し込みの流れは、まず市区町村長の認定を受け、その後、銀行等の金融機関に認定書を持ち込みます。認定の受け方については中小企業庁のホームページでご確認いただければと思います。
信用保証協会は中小企業が無担保で利用できる保証限度額が8,000万円と定められています。あくまでも利用可能な枠のことであり、必ず8,000万円の保証を受けられるということではありませんが、セーフティーネット保証制度はさらに別枠で8,000万円の保証枠が設けられます。
通常の融資審査は業績が悪いと通りませんが、本制度は業績が悪くなければ利用することができません。また通常の金利は、業績が悪くなればなるほど高くなりますが、本制度は低い金利で利用することができます。業績が悪くなることを歓迎したくはありませんが、そうなった場合には利用したい制度です。
Comments